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■古田雄介様■

やっぱ完璧な羊頭羊肉な本は嬉しい~『死体入門』『江戸将軍が見た地球』

 タイトルから想像される内容と、実際の中身にズレがある本は意外と多い。新鮮みのない噂話だけで作っちゃった『衝撃! ○○の真実』的な羊頭狗肉本は無視しても、「羊頭羊&狗肉」や「羊頭羊肉(※ただし、後半は骨と皮も入る)」みたいなものはザラ。やっぱり人間が作るものだから、看板どおりの作品を目指しても、ネタ不足から賑やかし的に不要な内容を混ぜたり、途中で入れ込みすぎてちょっとコンセプトがズレてしまったり、というのは多少出てくる。

 それでもトータルで面白ければ全然OK。・・・OKだけども、ラストまでコンセプト通りで突っ走る本の爽快な読後感は格別だ。てことで、今回は「ご意見番通信」用に、“羊頭羊肉”なメディアファクトリー新書2冊を紹介したい。


●『死体入門』/法医学者 藤井司

 法医学の世界で生きてる藤井氏が、人間の死と死体、死体をとりまく環境について淡々と解説した一冊。著者の経歴から、死体に関する濃い情報が読めるのは想像に難くないが、それ以上に嬉しいのは、本気で死体の入門書として作っていること。

 第1章「死体とは何か」では、魂の重さを計った100年前の実験例や時代や国ごとの死の定義をトリビア的に伝えて、第2章「人が死ぬということ」で、腐乱や白骨化などの死体の状態変化をガッツリ解説している。そこから第3章「ミイラに込めた願い」で、再び国際色豊かなトリビアを盛り込みつつ、世界中にある普遍的な死生観に言及。ようやく法医学の専門性が強まるのは、死体が処理される実際の流れを追った第4章「死体をとりまく世界」から。そして、直後の第5 章「死体の利用法」で、死体研究の成果を伝えて本編が終る。死の定義をキャッチーなネタで説明して引き込み、死体の種類から実際の現場と成果へと、階段を上るようなスムーズな流れで読者を誘導しているのだ。

 もし法医学者としての知見に頼って本を作っていたら、全体的に「法医学入門」的な雰囲気がきつくなって、とっつきにくくなっていたと思う。タイトル通りの「死体入門」になっているのは、専門家の立場を一旦置いて、一般的な視点から死体を見つめ直してた結果じゃないだろうか。あらゆる角度から「死体」を眺めて、様々な観点から面白い部分を拾ってきたような、音楽CDのベスト盤的な印象。あぁ、「入門書」とほぼ同義か。

 「分かる奴だけ付いてこい」的なスタンスの教授が教える授業も面白いけど、多くの人に安心して薦められるのは、「死体はこんなに興味深いんだよ」と語りかけてくれる教授の授業。ということで、グロ系が嫌いな人にもプッシュしたい。


●『江戸将軍が見た地球』/歴史学者 岩下哲典

『死体入門』がベスト盤だとしたら、『江戸将軍が見た地球』はコンセプトアルバム的な本といえる。タイトルの通り、江戸時代の将軍が当時の世界情勢をどれだけ掴んでいたのか、初代の家康から15代の慶喜まで順を追って伝える内容。この独特の切り口は、徹底的に視点を絞り込んだスタンスによって面白みが倍増している。

 総合的な歴史書のような俯瞰的な視点や複数の重要人物の視点はざっくりとそぎ落として、あくまで各時代の将軍(や事実上の最高権力者)周辺に立って展開しているのが見所。これにより260年の時代の流れが、驚くほどハイスピードで頭に入ってくる。

 各世代のセクションでは、その世代の幕府がとった外交政策の背景を説明するために、トップの政治手腕や性格、当時の国内情勢などを盛り込んでいるが、それ以外の余談はほとんどなかった印象だ。余計な回り道を作らないで、一直線に各時代の「江戸将軍が見た地球」をサクサク解説する。ページ数の関係かもしれないが、これが読んでいるときのスピード感を生んでいると思う。

 この速度で読み進めると明治維新まであっという間だ。そして、慶喜が表舞台から去ると本編も終了する。残るは4ページの「おわりに」や参考文献だけ。最後まで疾走感が持続して、最後はカットアウトですっきり感じだった。日本史は中学生時代に習ったきりで、戦国時代や幕末趣味もないという個人的な事情も、読後の好印象に拍車をかけているのは事実。でも、切り口が個性的だから、けっこうな歴史マニアでも、僕と同じくらいの新鮮さを感じる気もする。

(出典:古田雄介のブログ 2011年10月10日)
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